オランダの番組制作会社コンセルトツェンダーの膨大な放送アーカイブの中から現代音楽のおすすめ番組を選んで紹介する。このページでは黎明期のサティから新ウィーン楽派までを簡単に紹介して、20世紀生まれの作曲家に焦点を当てる。
作曲家紹介にある「主流派」とは狭義の現代音楽、すなわちシェーンベルクからポスト・セリエルにいたる一連の学究的な芸術運動に与した一派を指す。楽曲に付した順位はオランダ・ラジオ4の2022年版クラシック・トップ400における人気を表す。
アンドリーセン、ルイ Louis Andriessen (1939-2021) - オランダの作曲家。折衷主義者。一定の楽派に留まることなく新古典主義、セリエル、ミニマル、ジャズ、異国趣味などを渡り歩いて独自の美学を探求。
クセナキス、ヤニス Iannis Xenakis (1922-2001) - ルーマニア出身の作曲家、建築家。ギリシャ系。留学先のギリシャで反政府活動の末フランスに脱出。音楽を物理現象と捉えて数理モデルに基づいた楽曲を制作。
グバイドゥーリナ、ソフィア Sofia Goebajdoelina (1931-) - ソ連タタール共和国出身の作曲家。ドイツに移住。ロシアでは「いい加減な音楽」と評される。特異な楽器の組み合わせやキリスト教神秘主義に特徴。
グラス、フィリップ Philip Glass (1937-) - アメリカの作曲家。本家ミニマル音楽の御三家の一人。自身の音楽がミニマルに分類されるのを嫌がる。映画音楽でよく知られるが、古典形式を表題にした作品も多い。
グレツキ、ヘンリク Henryk Górecki (1933-2010) - ポーランドの作曲家。前衛各種から耽美系ミニマル音楽へ転向。1992年のアルバム「悲歌の交響曲」が英米のヒットチャートを駆け上がり、異色の大ヒット作に。
ケージ、ジョン John Cage (1912-1992) - アメリカの作曲家、着想家。実験音楽の草分け。全面休符の作品「4分33秒」や、ピアノの弦を直接弾いて演奏する仕掛け(プリペアド・ピアノ)などで話題を集める。
コーツ、グロリア Gloria Coates (1938-) - アメリカ出身の作曲家。ドイツ系でドイツに移住。ポスト・ミニマルの印象主義者。カノンとグリッサンドを多用した作風に特徴。暗鬱にくすんだ音色の作品が多い。
サティ、エリック Erik Satie (1866-1925) - フランスの作曲家。調性音楽に対する反抗から生じた数々の手法が後の現代音楽に通じるものがあり、死後「現代音楽の開祖」と崇められる。生前は変わり者扱いで伝染力に欠く。
シェーンベルク、アルノルト Arnold Schoenberg (1874-1951) - オーストリア出身の作曲家。ユダヤ系。新ウィーン楽派の師範。十二音技法の創始者。クラシック音楽の潮流を変化させた功績により「現代音楽の父」と呼ばれる。
編注) 特集の選曲は素晴らしいが全体に楽曲の雑な端折りが多くストレスを感ずる。
シュトックハウゼン、カールハインツ Karlheinz Stockhausen (1928-2007) - ドイツの作曲家。主流派(ダルムシュタット楽派)の風雲児。20世紀後半の楽壇でもっとも物議を醸した自信家。ブーレーズの弟分で電子音楽の先駆者。
シュニトケ、アルフレート Alfred Schnittke (1934-1998) - ソ連出身の作曲家。残留ドイツ系ユダヤ人。新旧技法を取り入れた「多様式主義」を謳う。20世紀後半のクラシックでもっとも演奏・録音された作曲家。
ストラビンスキー、イーゴリ Igor Stravinsky (1882-1971) - ロシア出身の作曲家。米国に移住。ロシアの荒々しい原始主義で西欧のサロン化した楽壇を震撼。その後は新古典主義で主導的な役割を果たす。
ソルバルドスドッティル、アンナ Anna Thorvaldsdottir (1977-) - アイスランド出身の新進気鋭の作曲家。ベルリン・フィルやニューヨーク・フィルなど世界の名だたる楽団が作品を委嘱する時代の寵児。コーツに作風が似る。
武満 徹 Toru Takemitsu (1930-1996) - 日本の作曲家。現代西洋音楽の規範に従いつつ東洋の情緒や楽器で彩色して好評を博す。西洋人が受け入れがたい異教(仏教)や思想に距離を置いたことが成功の要因か。
ノーノ、ルイジ Luigi Nono (1924-1990) - イタリアの作曲家。主流派(ダルムシュタット楽派)の異端児。ブーレーズ、シュトックハウゼンとともに「前衛三羽烏」と呼ばれる。中期以降は政治色を帯びるが、テープ音楽で功績が大きい。
ブーレーズ、ピエール Pierre Boulez (1925-2016) - フランス出身の指揮者、作曲家。主流派(ダルムシュタット楽派)の優等生。セリエル音楽の旗手にして「管理された偶然性」の体現者。自ら指揮して録音した作品が多数遺る。
プッスール、アンリ Henri Pousseur (1925-2016) - ベルギーの作曲家。主流派(ダルムシュタット楽派)の電気技師。観客が筋を決める「あなたのファウスト」で成功を収めるも、近年の新譜は電子音楽に偏る。
ベリオ、ルチアーノ Luciano Berio (1925-2003) - イタリアの作曲家。音楽と言語の関係を追求した声楽作品に傑作が多い。奏法を生涯探求したことでも知られ、無伴奏超絶技巧曲「セクエンツァ」は腕自慢のお気に入り。
ベルク、アルバン Alban Berg (1885-1935) - オーストリアの作曲家。新ウィーン楽派。シェーンベルクの愛弟子。十二音技法で作曲しても浪漫主義が薫り立つ作風に特徴。晩成型の才能なのに早世して作品が少ない。
ペルト、アルボ Arvo Pärt (1935-) - エストニア出身の作曲家。耽美系ミニマル音楽のヒットメーカー。存命の作曲家としては抜群の人気を誇る。代表作「鏡の中の鏡」はオランダ・ラジオ4の2022年版クラシック・トップ400で第3位。
ペンデレツキ、クシシュトフ Krzysztof Penderecki (1933-2020) - ポーランドの作曲家。斬新な密集音塊の使い手として名を馳せるも、新ロマン主義に転向して鳴かず飛ばず。日本では「広島の犠牲者に捧げる哀歌」が有名。
細川 俊夫 Toshio Hosokawa (1955-) - 日本の作曲家。主流派(ダルムシュタット楽派)の末裔で、日本では秋吉台ミュージック・アカデミーを開催。欧州で人気があり、武満徹の後継者と目される。
編注) 特集#3は音源欠損(著作権の問題か)のため省略。
メシアン、オリビエ Olivier Messiaen (1908-1992) - フランスの作曲家、教育者。主流派の大先生。門下生多数。情景を描く能力に優れる。敬虔なカトリック信徒で宗教的な主題作品が多い。
ライヒ、スティーブ Steve Reich (1936-) - アメリカの作曲家。ユダヤ系。本家ミニマル音楽の御三家の一人。生涯ミニマル音楽の可能性を追求した学究肌で、この分野の第一人者と目される。
ライリー、テリー Terry Riley (1935-) - アメリカの作曲家、演奏家。山梨県在住。本家ミニマル音楽の御三家の一人。ライリーの楽曲はいわば即興演奏のための材料一式であり、音楽は演奏家が組み立てる。
リーム、ウォルフガング Wolfgang Rihm (1952-2024) - ドイツの作曲家、教育者。主流派で戦後世代の中心人物。多作家。一般的な楽器編成の作品が多いことから実際に演奏される機会が多い。
リゲティ ジェルジュ György Ligeti (1923-2006) - ハンガリー出身の作曲家。ユダヤ系。主流派の野人。セリエル音楽に密集音塊なる音響効果を持ち込んで一世を風靡。世俗的には「2001年宇宙の旅」で有名。
ウェーベルン、アントン Anton Webern (1883-1945) - オーストリアの作曲家。新ウィーン楽派。シェーンベルグの愛弟子。寡作家で全32作品。厳格な十二音技法の作例が多く、その完成度に心酔した後進は数多い。
編注) ウェーベルンは事故死して終活できず、死後多数の習作が発掘された。作品番号がないのはそれらの発掘品。
番組リンクをクリックして番組ページに移り、ページに埋め込まれた再生ボタンを押す。番組冒頭に前の番組の末尾が残り、途中から始まったような番組もあるが、雑に切り出しただけだから気にしない。
最終更新日 2024年09月13日(リームの追悼番組を追加)